CT画像診断
1.歯科用コンビームCT機器の再評価

 a.撮影領域(FOV)
 FOVとはField of View(視野)の略語で、X線撮影では画像範囲ということになります。
図1は普段歯科臨床でなじみのあるデンタルX線写真、パノラマX線写真とCTとのFOV比較したものです。大きさは原図で同比率で示してありますので、大きさの比較が感覚的にできるはずです。
 重要なのは歯科用CTで見たいところを確実に見るために必要な撮影領域は何がいいのかを考えていくことです。

図 1
 図2は歯科で市販されていたことのある3機種の実画像のFOV比較です。それぞれの取扱いディーラーからCTデータをお借りして、OsiriXソフトで画像を比較してみたものです。まず左上のFOV8cmの場合です。この画像は前歯部が撮影範囲いっぱいまで前方に寄せて撮影されていますが、黄色の丸のエリアを見てください、8番の根尖部がカットされています。FOVが8cmでは水平埋伏歯までの撮影範囲が少し足らないことになります。右上のFOVが10cmの機種では左右の8番水平埋伏歯の根尖まで撮影可能です。ただし、FOVが10cmあっても体格のいい人では位置づけの僅かなずれで根尖部がカットされてしまうことがあり油断できません。

図 2
下はFOVが15cmの機種です。水平埋伏歯までの十分な撮影領域を持っていますが、ブルーの丸のエリアを見てください。左右の顎関節の外側半分がカットされているのが分かります。1回の撮影で左右の顎関節までと考える時はFOV15Cmでは不足でFOVが16~17cmは必要になるようです。
 10CmFOVで撮影可能な領域を実際の臨床例から見ていくことにします。
 図3は小柄な女性のCT前頭面観です下顎下縁から上顎洞自然孔まで確認できます、これが条件の良い時の10CmFOVの限界だと考えています。普通ここまで確認できることは少なく通常は下顎下縁から上顎洞の下半分が撮影領域になることが多い。今までの使用経験から歯性上顎洞炎・粘膜肥厚などがかなりの頻度で見られることから上顎洞を含む撮影領域は歯科でも重要だと考えています。

図 3
 図4は同じ患者さんの側方面観で上下顎前歯から後方は咽頭、喉頭蓋まで撮影領域がありVF(嚥下造影検査)も可能な前後的撮影領域があることが分かります。

図 4
 歯科用CTの撮影領域についての私見をまとめます。図5は市販されている歯科用CTの代表的な4種類のFOVを比較したものです。
撮影領域を広くすれば被曝線量が増加することから必要にして最小限の撮影領域を自分の臨床に照らし合わせて決めておくことが大切です。
 少し前まで発売されていた機種の15CmFOVは左右顎関節には広さが不十分で撮影領域に水晶体が入ることから歯科用には向いていない考えています。そして8CmFOVは左右水平埋伏歯までの撮影領域が不十分で使用には不便を感じるはずです。

図 5
 水晶体の領域を外し歯科関連領域のほぼ全ての1回撮影が可能な10CmFOVは歯科用CTには必須のFOVです。それ以外に小領域5Cm前後の2種類の撮影機能を持っている機種が使用しやすいと考えています。
 図6に示すように左右顎関節はFOV5Cmの小領域で撮影、歯科領域全体は10CmFOVで撮影、問題部位の経過観察等が必要な時はFOV5Cmの小領域で撮影するというのがベストの選択になるのではないかと考えています。
私たちが使用している日立のCB Throne(既に生産中止になっている)にはFOV10CmとFOV5Cmの二つの撮影モードがありますがFOV5Cmモードで撮ることはほとんどありません。特に最初の撮影では歯科領域全体のチェックが可能なFOV10Cmモードを選んでいます。デンタルX線写真の全顎撮影2回分にあたるといわれる実効線量は到底無視できる値ではありません。しかし必要性があると考えた症例では迷

図 6
いなく撮影し、撮影領域をくまなく観察し、それを患者さんにきちっと説明する、決して忘れてはならないことと考えています。CTはフルスキャンの場合、撮影領域を狭くしても実効線量がかなり高いようなのでCTのデンタル様使用法は個人的には反対なのです。
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