infection院内感染対策

9スケーラー・キュレットの滅菌システム

スケーラー・キュレットは使用後研摩しなければなりません。研磨作業中の感染を防ぐため、研磨作業前に一旦グルタラール製剤で消毒しなければならないことから、他の器具類と比較して滅菌行程がやや長くなります。

  • ①使用済みのキュレットは先ず流水下で水洗し、血液等をできる限り除去しておく。

  • ②両頭の器具類は突き刺し事故を起こし易いことから、水洗後キュレット専用のカセットに入れて流しに保管する。

  • ③数がまとまったら洗浄剤を入れた超音波洗浄器に浸漬し、30分間超音波洗浄する。

  • ④器具類がまとまったら(午前、午後一回ずつ)一緒に市販の食器洗い機で30分間洗浄をする。

  • ⑤器具の水分を良く拭き取った後、グルタラール製剤で1時間消毒する。

  • ⑥流水下で良く水洗した後、食器乾燥機で乾燥させる。

  • ⑦キュレットの研磨をする。

  • ⑧一本ずつ滅菌バッグにパッキングする。

  • ⑨121度25分でオートクレーブ滅菌する。

  • ⑩以前は衛生士別に保管していたが、最近は11/12太い、11/12細いなどのように、刃先の状態で区別してキュレットの選択がしやすい保管方法になった。

キュレット用トレー(両頭器具トレー)

ルートプレーニング時、基本セットとは別に両頭器具トレーを必ず用意しなければならないことはすでに述べてきました。そしてグリーンのエリアには術者の手指が入らないように治療を進めていかなければなりません。
由については5.グローブ着用とグローブ着用手指の順守事項(d.トレー上の順守事項)に詳しく記述してありますので参照して下さい。
歯科衛生士は以下の理由から交叉感染に対して特に注意しなければなりません。

  1. 歯周治療は必ずといっていいほど出血を伴う
  2. 未滅菌グローブを着用している意識が薄い
  3. 一人で処置を進めていくことが多く、補助者を利用できない

この後、スケーラー・キュレットの使用ルールのところで現在村井歯科の歯科衛生士が実践している交叉感染予防法が詳しく記述してありますので、参考にしてください。

歯科衛生士は治療機材の補充で動き回らなくてすむように、治療前に滅菌ガーゼ、薬液綿球、ポケット内消毒の為の機材など確実に用意した上で治療を開始します。
やむなく他の業務につく場合はグローブを交換して作業に入ることになります。

歯周ポケット

図は感染予防の視点で歯周ポケット内を見直して見たものです。

黄色のTooth:歯周ポケット内の歯根表面
Bacterial Biofilm:歯根表面に付着した細菌や毒素
Ulcer:炎症を起こした歯周組織の潰瘍面

  1. 日本赤十字の献血時の注意事項のなかに「3日以内にスケーリングをした人は採血ができない」ことになっている
  2. 歯周病と糖尿病等の全身疾患との関連が問題視されている

歯周ポケットへの不用意な処置で一時的な菌血症を起こしてしまったり、歯周病の放置で全身疾患を増悪してしまうことのないようにしていかなければなりません。

歯周ポケット内消毒

歯周ポケット内細菌を全身に伝播させてしまうことのないように、以下の歯周ポケット内処置にあたって必ずポケット内を消毒します。

  1. 歯周組織検査前(基本検査、精密検査)
  2. スケーリング前
  3. ルートプレーニング前後
  4. 歯周外科前

使用する薬剤(a.が第一選択、ヨードが使用できない患者さんにはb.を使用する)

  • 0.5%ポピドンヨード液(10%イソジン液を注射用水で20倍希釈)
  • 0.1%塩化ベンゼトニウム液(0.2%ネオステリングリーン液を注射用水で20倍希釈)

バリオス、ピエゾンマスターの外部注水容器に薬液を入れ、バリオスはPモード、ピエゾンマスターはイリゲーションモードで使用しています。

スケーラー・キュレットの使用ルール

  • ①スケーリングやルートプレーニング時だけでなく、歯周組織検査など歯周ポケット内の処置の前には必ずポケット内の消毒を行ないます。ポケット内細菌を極力減らしてから処置を進めていきたいからです。

  • ②左手は必ずミラーを使用し、左手で直接排除などを行なわないようにします。補助者を利用できない時は口外バキューム等を有効に使用して、飛沫汚染を極力減らしていきます。

  • ③ポケット内のプラークを洗い流しながら消毒していきます。

  • ④グリーンのエリアは器具類の組織を穿通する部位、あるいは血液に触れ手しまう部位が位置するエリアです。

    • ミラーで排除していたら血液に触れてしまった
    • プラークの付着状態をチェックしていたら探針に血液が付着した
    • 歯周ポケットをチェックしたらプローブに血液が付着した
    • 血液の付いたガーゼをピンセットで摘んだ
    • キュレットの刃部

    「術者(未滅菌グローブ着用)の手指の汚れを患者さんに伝播しない」と「患者さんの血液には触れない」の2つを守るためにグリーンのエリアには手指を触れないように治療をすすめていきます。

  • ⑤歯科衛生士の基本的なポジションです。左手は必ずミラーを使用し、左手の汚染を防止します。

  • ⑥治療終了時の手指の状態です。右手は血液で汚染されていますが。左手は血液や唾液の付着はありません。

  • ⑦治療終了時のトレーの様子を示しています。右手はルートプレーニング時のフィンガーレストの関係から血液の付着は避けられません。その時一々グローブを交換していてはきりがないため、赤(右手)のエリアが血液で汚染されていることを認識し、そのまま処置を進めていくことになります。この場合でもミラーは必ず左手で扱い左手とミラーの汚染を防止します。

  • ⑧治療中、右手は汚染されているためライトの取手やキャビネットの取手に右手を触れることはできません。必ず汚染されていない左手で操作します。

  • ⑨治療が終了したら、先ずグローブを交換します。

  • ⑩器具類を片ずけ、チェアー等の消毒をしてから、患者さんに治療結果等の報告をします。