infection院内感染対策

d.トレー上の順守事項

トレー上の交叉感染

歯周外科治療時のトレー上の状況です。器具類がトレー上に全部収まっているので問題なさそうに見えるのですが、この状況がまだ治療途中なら問題があるのです。
たとえば、術中に上から3つ目の歯肉鋏を取ろうとすればその上に乗っているキュレットの刃先の部分に触れてしまいます。キュレットはすでに使用されているため次の2つの困った問題が起こります。

1) キュレットの刃先の血液がグローブに付着してしまった

グローブを交換するか他のもの(スイッチ等)に手を触れないように治療を進めなければならない

2) 未滅菌のグローブ着用のためキュレットの刃先を汚染させてしまった

キュレットを新しいものに交換しなければならない
持針器を使用したい時も使用済みのエルバトで同様なことが起こる可能性があります。

トレー上のルール

治療中のトレーの状況を見てみます(上の写真)。グリーンで囲まれたバーセットは未使用であり滅菌状態が保たれているため未滅菌グローブを着用した手指では触れることができません。そして赤丸に囲まれた部分、使用済みのバー(シャーレの中)、患者さんの血液が付着したガーゼあるいは綿花、そしてそれらを摘んだピンセットの先端部分には患者さんの体液が付着している可能性があるため触れることができません。

すなわち下の写真の赤の四角のゾーンには手指を挿入しないように治療を進めていくことが重要なのです。
赤のゾーンには滅菌されたものと患者さんの体液(血液等)が付着したものが同居しているだけで、術者や補助者の未滅菌グローブ着用の手指からの汚染は入り込まない状態をつくりだすのです。
滅菌されたものと、汚染されたものの同居は一見不合理に見えますが、汚染されたと言っているものが患者さん自身の体液であることから、この患者さんにとっては不潔なものではないと考えて対応していくのです。
組織を穿通するメスの替え刃部分や歯周組織検査のプローブの測定部分等は赤のエリアに位置するように治療をすすめていくことになります。

口腔外科治療時のトレーの状況です。基本セットのトレー以外にもう1枚トレーが用意されています。
基本セットのトレーには片側だけに組織を穿通する可能性のある器具類(持針器、歯肉鋏、生理食塩水シリンジ、抜歯鉗子等)が載っています。
もう1枚のトレーには両側が組織を穿通する可能性のある器具のみが載っています。このように両頭の器具類(鋭ヒ、キュレット、スケーラー、エルバト等)は片頭の器具とは同居できないのです。これらが同じトレーに同居すると、このセクションの最初に述べた「トレー上の交叉感染」が起きてしまうのです。

片頭の器具類は赤のエリア意外の所から器具を取り出し、赤のエリアには手指を触れることなく処置を進めていくことになります。両頭の器具類は両端の赤いエリアには触れることなく、真ん中から器具を取り出し処置を進めていきます。
このような器具類の使用ルールが徹底してくると、たとえ未滅菌グローブを着用していても滅菌システムを台無しにしてしまうことを無くなってくるのです。

両頭の器具類を出す時に毎回トレーをもう1枚用意するなど結構面倒なこともあります。
最近、コンポジット充填器やジンパックインスツルメントなどにはこのようなパット(空色の器具)を用意しておき、他の器具と高低差をつけて基本セットのトレー内に同居させ、使用していることもあります。